AI のニュースが「TSMC の CoWoS 生産能力がまた奪い合いに」と伝えるたび、多くの人は「不足に関係する話」という点しか受け取れない。CoWoS が一体何なのかをうまく言えず、ましてや、なぜパッケージングの技術が AI チップ産業全体の出荷ペースを握れるのかは見えてこない。
この記事では、それを一度にすっきり説明する。まず CoWoS とは何か、それが「先端パッケージング」とどう関係するのかを押さえ、次になぜ鎖全体を詰まらせるのか、最後になぜ台湾がちょうど中心に立つのかを見ていく。これは AI ハードウェアサプライチェーン総まとめ の第3関門を深掘りした版だ。
CoWoS とは?一言と一つのたとえで
CoWoS の正式名称は Chip on Wafer on Substrate、TSMC の 2.5D 先端パッケージング技術の一つだ。やっていることは実はとても単純で、1個の GPU チップと複数の HBM 広帯域メモリを同じ「インターポーザー」の上に置いて密着させ、それを基板に固定して、1つの巨大な AI アクセラレーターモジュールに組み上げる。
たとえてみよう。従来のパッケージングは、演算チップとメモリをそれぞれ別々に組み立て、回路基板の配線でつなぐようなもので、両者の間にはそれなりの距離が空いている。CoWoS は、複数のレゴブロックを同じ土台に精密に貼り付けて1つの「大きな積み木」にするようなもので、チップとメモリをほとんど触れ合うほど近づける。
なぜそこまで手間をかけるのか。新世代の GPU と HBM の間で毎秒運ぶデータ量が、数 TB から次世代 Rubin の20数 TB へと一気に増えていくからだ。距離が伸びれば信号は減衰し、遅延が増え、チップ全体の足を引っ張る。従来の回路基板の配線ではこの水準にまったく届かず、チップを極限まで近づけるこの種のパッケージングでしか解決できない。一言で覚えるなら、CoWoS は GPU とメモリを「顔を突き合わせて働かせる」技術だ。
先端パッケージングとは?CoWoS とどう関係するのか
多くの人は「先端パッケージング」と「CoWoS」を同義語のように扱うが、実際には前者が大きなカテゴリーで、後者はそのなかの看板的な一手法だ。
かつてのパッケージングの考え方は「1つのチップに1つのパッケージ」で、マザーボードを介してプロセッサーとメモリをつないでいた。先端パッケージングはこの遊び方を変え、大きく2つの道に分かれる。一つはシリコンインターポーザーの上で複数のチップを横に近接配置し、互いの配線を短くするやり方で、これはよく 2.5D に分類される。もう一つは、いっそチップを垂直に積み重ねて 3D IC にし、シリコン貫通電極で上下を貫通させるやり方だ。
TSMC はこのファミリーのなかに一連のブランドをそろえている。CoWoS は 2.5D で、GPU と HBM を横並びに密着させる。SoIC は 3D 積層、InFO はより薄いファンアウト型パッケージで、スマホのチップによく見られる。CoWoS がもっとも名前を挙げられるのは、まさにこの世代の AI アクセラレーターのもっとも切実なニーズに合致しているからだ。
CoWoS 自体もさらに3種類に分かれ、違いは「真ん中のあの板」を何で作るかにある。最初の CoWoS-S は1枚まるごとのシリコンインターポーザーを使い、密度がもっとも高い。CoWoS-R は樹脂系の再配線層に切り替え、柔軟性が比較的高い。CoWoS-L は「局所シリコンブリッジ」で複数のチップを橋渡しし、より大きく、より多くの HBM を詰め込んだパッケージを作れる。まさに現在の最上位 GPU が使い、もっとも不足している版だ。
読者にとっては、一つの階層関係を覚えておけば十分だ。先端パッケージングはカテゴリーで、CoWoS はそのなかで AI GPU 向けに仕立てられた一種である。
コアデータのスナップショット
下の表は、CoWoS の不足を理解する鍵になる。先に断っておくと、これらの生産能力の多くは調査会社や業界メディアの推計値であって、TSMC が月ごとに公式発表する数字ではない。だから重点は、ある正確な数値ではなく「成長の傾き」に置いてほしい。
| 時点 | TSMC CoWoS 月産能力(ウエハー枚/月) | 性質 |
|---|---|---|
| 2023年末 | 約1.4万〜1.5万枚 | 推計 |
| 2024年末 | 約3万枚超(外注の後工程を含めると4万枚近く) | 推計 |
| 2025年末 | 約7万〜8万枚 | 推計 |
| 2026年末(目標) | 約12万〜13万枚(保守的なレンジで約11.5万〜13万枚) | 目標/業界推計 |
わずか3年で、月産能力は1万数千枚から12万枚超へと一気に駆け上がり、8〜9倍の規模拡大となった。それでも生産能力は需要に追いかけられ続けており、ここから次の問いが出てくる。
なぜ CoWoS が AI サプライチェーン全体を詰まらせるのか
理屈は実はそう複雑ではない。高性能 AI アクセラレーターで、CoWoS や類似の 2.5D パッケージングを使わないものはほぼない。Nvidia の B200、B300、GB300 から次世代 Rubin プラットフォーム、さらには Google 自社開発の TPU のような AI ASIC まで、これらの、多くは複数の HBM を抱えるチップは、ほぼすべてこの関門を通らねばならない。こうして CoWoS の月産能力は、高性能 GPU 出荷のもっとも重要なボトルネックの一つになる。
公平のために一言添えておく。CoWoS が唯一の関門ではない。先端プロセス、HBM、基板(substrate)といった工程も同じように詰まりうる。ただ、このパッケージングの関門が特に逼迫しているのだ。TSMC も2026年第1四半期の決算説明会で、先端パッケージングの生産能力が逼迫しており、外部の後工程会社とともに増産しなければ需要に追いつけないと認めた。調査会社は、この 2.5D パッケージングの需給逼迫は2027年になってようやくいくらか緩むと広く見ている。言い換えれば、ウエハーが作れて HBM も供給できたとしても、CoWoS のこの一手が生産ラインに入らなければ、AI アクセラレーター1個はやはり出荷できない。
ここには見落とされやすい判断がある。今回の AI 競争では、「誰が CoWoS の生産能力を確保できるか」が、「誰のチップ設計が強いか」よりも先に出荷量を決めることがある。サプライチェーンのボトルネックを注視するほうが、製品発表会を注視するよりも、風向きを早く読めることが多いのだ。
誰が作れるのか?TSMC と後工程会社の分業
この関門の絶対的な主力は TSMC だが、一社で抱え込んでいるわけではない。
TSMC は専用の先端パッケージング工場を建て続け、もっとも上位で複雑な CoWoS-L は自社に残している。需要が本当に満杯のときは、比較的標準的な部分を専門の後工程会社(業界では OSAT と呼ぶ)に外注し、よく名前が挙がるのは ASE テクノロジー・ホールディングや Amkor だ。業界は、ASE のような会社の CoWoS 級生産能力が2026年には月2万〜2万5千枚ほどに拡大すると見ており、こちらの成長も同じくめざましい。
ただ規模で見れば、これらの後工程会社は今のところ「安全弁」に近く、TSMC からあふれた注文を吸収するのであって、対等な第二の供給源というわけではない。はっきりさせておくと、彼らが引き受けるのは多くが比較的標準的な工程か一部のプロセスで、TSMC の最上位 CoWoS-L をまるごと複製しているわけではない。そして ASE 傘下の SPIL 自体も台湾の会社なので、注文が外注されても、多くの工程は依然として台湾のサプライチェーン内にとどまる。「先端パッケージング関連銘柄」を知りたい読者にとって、この分業の線は誰がどの部分を取るのかを理解する出発点になる。ただし、各社がどれだけ引き受けられるか、粗利がどうかは、やはり各社の決算に立ち返る必要があり、本記事はいかなる投資判断も行わない。
なぜ台湾がこの鎖の中心に立つのか
CoWoS の主力生産能力は、台湾のいくつかのサイエンスパークの工場に高度に集中しており、新たな増産案件もその多くが台湾に落ちている。これは「GPU プラス HBM の 2.5D パッケージング」というこの層において、台湾が世界で単一の、もっとも重要な地理的集中点の一つであることを意味する。
これを前の関門とつなげて見ると、よりはっきりする。高性能 AI チップはまず TSMC の先端プロセスで刻み出し、続いて TSMC の CoWoS で封止する必要がある。もっとも詰まりやすい2つの工程が、同じ島に集まっているのだ。いったん台湾からの供給が途絶えれば、Nvidia や Google といった会社の高性能 AI プラットフォームは、短期的には同等の代替生産能力をほぼ見つけられない。だからこそ、この単一の集中点は世界のテクノロジーと資本市場から注視される。世界の AI 計算能力の供給に、直接連動しているからだ。
これから何を見るか:CoWoS-L、ガラス基板、パネルレベルパッケージング
この関門はまだ急速に進化しており、長期で追う価値のある技術の方向が3つある。
第一に、CoWoS 自体がさらに大型化を続ける。TSMC は2026年の技術フォーラムで、すでに 5.5 倍レチクル(reticle、一度の露光で作れる最大面積と理解すればよい)の CoWoS を作れることを明かし、2028年には14倍レチクル版を投入する計画も示した。そのときには、1個のパッケージにおよそ10個の演算チップと20個の HBM を統合できる。パッケージがどんどん大きくなるのは、まさにデータをますます欲しがる次世代 GPU を満たすためだ。
第二に、ガラス基板(glass substrate)だ。従来の有機基板をガラスに置き換えるもので、理論上はより大きく、より平坦なパッケージを支えられる。ただ先に断っておくと、2026年の時点ではまだ CoWoS の代替品ではない。Intel は2026年初めにサンプルを披露したが、多くの会社の量産時期は2027〜2028年に落ちている。
第三に、パネルレベルパッケージング(TSMC はこれを CoPoS と呼ぶ)だ。パッケージングを円形のウエハーからより大きな四角いパネルへと移し、一度により多くを処理してコストを押し下げる。TSMC はすでに試作ラインを建てているが、量産は一般に2028〜2029年とみられている。
これらの技術はいずれも短期では CoWoS を置き換えられず、むしろそれを「延命」し「アップグレード」する後継の控え部隊に近い。これらをいち早く量産歩留まりにまで仕上げた者に、次の先端パッケージングの主導権が移っていく。
ポイント整理
この関門を見終えて、いくつか覚えておく価値のあることがある。
CoWoS とは突き詰めれば、GPU と HBM を「顔を突き合わせて働かせる」先端パッケージングであり、高性能 AI チップはほぼこれを避けて通れない。その月産能力は高性能 GPU の出荷上限をおおよそ枠づけ、2025〜2026年は明らかに需給が逼迫し、TSMC でさえ後工程会社を安全弁として頼らざるを得なかった。
さらに重要なのは位置だ。CoWoS の主力生産能力は台湾に集中し、先端プロセスとともに、世界の AI サプライチェーンでもっとも敏感な単一の集中点の一つを構成する。これは台湾の戦略的価値であると同時に、世界がもっとも気にかけるリスクの所在でもある。
続いて、チップにデータを供給し、同じく逼迫している HBM 広帯域メモリを読みたい人は、AI ハードウェアサプライチェーン総まとめ に戻ってほしい。鎖の8つの関門がどうつながるのかを理解したい人は、サプライチェーン総覧 を参照。