先の シリコンフォトニクスの関門 では、AI クラスターがますます大きくなって銅配線が苦しくなり、だからデータを光で運ぶようになった、という話をした。この記事はその続きだ。光をチップの隣まで持ち込む鍵となる手法 CPO をもう一段深く語り、ついでに光モジュール市場と台湾サプライチェーンが何で盛り上がっているのかを見ていく。
これは AI ハードウェアサプライチェーン総まとめ の光インターコネクトの関門を延長したもので、CPO、800G/1.6T 光モジュール、そして台湾株のテーマとしてよく扱われる「光通信関連株」に焦点を当てる。先に言い切っておく。本記事は産業上の役割と公開情報を述べるだけで、いかなる投資助言もしない。
CPO とは?一言でおさらい
CPO の正式名称は co-packaged optics、共封止光学だ。やっていることは、「電光変換」を担う光エンジンを、スイッチチップや AI アクセラレータのすぐ隣にパッケージすることだ。
なぜそうするのか。従来は電気信号がまず基板上を一区間走り、外付けの光モジュールに届いてから光に変換される。この区間は高速時には電力を食い、信号も歪む。光エンジンをチップの隣へ移すことは、この区間を切り詰めるのに等しく、省電力でより高い帯域密度を詰め込める。NVIDIA の数字では、この手法は従来の外付けモジュールに対し、最大で約3.5倍の電力効率をもたらすとされる。一言で言えば、CPO は光への変換点を、できるだけチップの身近まで運ぶ。
CPO と着脱式光モジュール、どう選ぶ
CPO の価値を理解するには、まずその挑戦相手を知る必要がある。着脱式光モジュール(pluggable)だ。
着脱式モジュールは挿し込みカードのようなもので、故障すればホットスワップでき、異なる速度や距離を混ぜられ、サプライヤーも多く、柔軟性が高く、いまの主流だ。CPO は光エンジンをチップの隣にパッケージし、省電力と密度はより優れるが、柔軟性も犠牲にする。光エンジンが故障すれば、一式、あるいはカードまるごと交換になりかねない。だから両者にはそれぞれ取捨があり、2026年はむしろ併存に近い。CPO はまず消費電力を最も気にする高性能用途に切り込み、着脱式モジュールは需要の大部分を守り続ける。
業界は CPO の弱点も補っている。たとえば CPO の外部レーザーを現場で交換可能なモジュールにすること(OIF の ELSFP 規格)は、まさに CPO が保守性で不利になりすぎないようにするためだ。言い換えれば、CPO は普及しながら短所を補っていき、短期で一足飛びに着脱式を置き換えることはない。
コアデータのスナップショット
以下の数字は、光通信というこの領域の熱気をつかむのに役立つ。市場と浸透率の多くは調査機関の推計値だ。
| テーマ | 数値 | 時点/性質 |
|---|---|---|
| 800G 超の光モジュール出荷比率 | 2024年 約19.5% → 2026年 60%超 | TrendForce 推計 |
| AI 用光トランシーバー市場 | 2025年 約165億ドル → 2026年 約260億ドル(前年比5割超) | TrendForce 推計 |
| AI 光通信モジュールにおける CPO 浸透率 | 2026年 約0.5% → 2030年 約35% | TrendForce 推計 |
| NVIDIA CPO スイッチ | Quantum-X/Spectrum-X Photonics、2026年内に分割導入 | NVIDIA |
| TSMC シリコンフォトニクス・プラットフォーム COUPE | 2026年量産を目標 | TSMC 2025年年次報告書 |
CPO は2026年にどこまで来たか
製品面では、2026年は CPO が研究室から商用化の入り口へと進む年だ。
NVIDIA は Quantum-X と Spectrum-X Photonics という2つのシリコンフォトニクス・スイッチを製品ラインに組み込み、公式の時程はいずれも2026年内の分割導入に落ちる(口径はなお調整されうる)。ブロードコムは TSMC のプラットフォームを採用した Tomahawk 6-Davisson CPO スイッチ(1台あたりスイッチ容量 102.4 Tbps)を発表し、現在は初期顧客へサンプル出荷している。TSMC のシリコンフォトニクス統合プラットフォーム COUPE は2026年の量産を目指し、サムスンは歩みを2029年の CPO 一式ソリューションに置く。
ただし「来年には全面的に CPO へ切り替わる」とは思わないでほしい。調査機関の推計では、2026年の AI 光通信モジュールにおける CPO 浸透率はわずか約0.5%にとどまり、3割超に達しうるのは2030年だ。2026年に本当に量を伸ばすのは、次の節で語る 800G から 1.6T への光モジュール需要だ。
光モジュール市場はなぜ盛り上がるのか
CPO はまだ立ち上がりの途上だが、光通信市場全体はすでに先に熱くなっている。支えているのは帯域に対する AI の食欲だ。
光モジュールの速度世代は、800G から 1.6T へ進む。調査会社の推計では、800G 超の光モジュールが世界出荷に占める比率は、2024年の約19.5%から2026年の60%超へ上昇し、AI 専用の光トランシーバー市場規模は、2025年の約165億ドルから2026年の約260億ドルへと、1年で5割を超えて伸びる。この需要のボトルネックは、レーザーチップ(EML、CW レーザー)、光学的なアライメント、放熱と消費電力にあり、まさにサプライチェーンが陣取る要所と重なる。
台湾の光通信サプライチェーン:何をしているのか
光通信とシリコンフォトニクスは、ここ数年の台湾株の熱いテーマだ。先に立場を言い切っておく。以下は公開のサプライチェーン上の役割を述べるだけで、受益銘柄、目標株価、売買の助言はまとめない。
台湾メーカーの機会は、主にいくつかの工程に集中する。レーザーチップ(EML、CW レーザーなど、光信号を生み出す中核部品)、受動光部品、光トランシーバーの組み立て・テスト、そしてシリコンフォトニクスのファウンドリーだ。産業報道で名前の挙がる役割はおおむね次の通り。聯亞(Landmark Optoelectronics)は EML レーザーチップを手がけ、華星光(EZconn)と聯鈞(Luxnet)はレーザーと光モジュールに布陣し、波若威(Browave)は受動光部品を手がけつつ NVIDIA のシリコンフォトニクス協業一覧にも現れ、上詮(PCL)は高密度の光ファイバーアレイと CPO の共封止を手がける。ほかに眾達(Applied Optoelectronics)、光聖(LandMark)、台達電(Delta Electronics)などは、より広義の光モジュール・接続サプライチェーンの議論によく登場する。
二点、注意したい。第一に、名前が挙がるのは公開のサプライチェーン上の役割や市場の議論であって、NVIDIA や一線のクラウド業者の受注をすでに獲得したことを意味しない。第二に、光通信とシリコンフォトニクスが市場の焦点になったのは、800G/1.6T と CPO の商用化期待が資金を引き寄せているからであって、個別企業が必ず恩恵を受けることを意味しない。本記事はいかなる銘柄選びも投資助言もしない。
機会とリスク
台湾メーカーにとって、2026年から2027年は 1.6T と CPO のサプライチェーンに陣取る正念場だ。一線顧客の設計導入(design-in、顧客の製品に設計として組み込まれ、認証を通ること)に食い込めるかどうかが、その後の市占を大きく左右する。
リスクも同じところにある。技術の移行期には、部品不足、光学的アライメントの歩留まり、放熱と消費電力といった難題がつきものだ。さらに着脱式、LPO(リニア着脱式)、CPO の複数路線がしばらく併存するため、路線を読み違えたり顧客認証に通らなかったりは、いずれも実体のあるリスクだ。記しておく価値のある兆候が一つある。NVIDIA は2026年に Lumentum、Coherent、Marvell といった光部品・チップメーカーへそれぞれ投資し(各約20億ドル)、光インターコネクトの要となる供給をより固く結びつけた。これはこのチェーンの戦略的な重みも物語る。
この関門の要点
CPO と光通信を見たあと、まず三つのことを覚えておきたい。
CPO は光エンジンをチップの隣へ運び、省電力で帯域密度を高めるが、保守の柔軟性は着脱式モジュールに劣り、2026年の浸透率はまだ非常に低く、併存状態にある。本当に量を伸ばしているのは 800G から 1.6T への光モジュール需要で、AI 用光トランシーバー市場は1年で5割超の伸びだ。台湾はレーザーチップ、受動部品、モジュールの組み立て・テスト、シリコンフォトニクスのファウンドリーといった工程に陣取り、これが光通信とシリコンフォトニクスが台湾株の熱いテーマになった理由でもある。だがテーマが熱いことは個別銘柄の推奨を意味しない。
光でデータを運ぶ基礎をおさらいしたいなら シリコンフォトニクスとは に戻ってほしい。これらの光接続が餌として与えるべき演算能力と電力を知りたいなら AI データセンターと電力 を、チェーン全体の8つの関門を見たいなら サプライチェーン総まとめ に戻ってほしい。