2026 年の Perplexity は、評価額が急騰する一方で、訴訟にも巻き込まれています。わずか 1 年あまりで、複数の大手米国メディアから提訴され、さらに EC 大手の Amazon にも目をつけられました。これらの訴訟が争う内容はそれぞれ異なりますが、その背後は同じ一つの問いを指しています。AI が直接あなたに答えを、さらには物事そのものまで片づけてしまうとき、コンテンツの作り手やプラットフォーム事業者との境界線は、いったいどこに引かれるべきなのか。

この記事では、Perplexity が直面する法的な戦場を一つひとつ切り分けていきます。そして、とりわけ一つのことに注意を払います。誰が本当に提訴したのか、誰はただ警告状を送っただけなのか、誰は実はまったく訴えていないのか。これらはしばしば混同されますが、区別して初めて状況が読み解けます。まずこの会社を知りたい方は、Perplexity とはどんな会社かから始めるとよいでしょう。


出版社の著作権戦争:誰が訴えて、誰は訴えていないか

まずは名簿をはっきり整理しましょう。ここは報道で最も曖昧に流されやすいところです。

対象法的措置現在の状況
ニューヨーク・タイムズ正式提訴(著作権)2025 年末に提訴、進行中
Dow Jones と NYP Holdings(The Wall Street Journal と New York Post の出版社、News Corp 傘下)正式提訴2024 年に提訴。Perplexity の却下申立ては裁判所に退けられ、証拠開示の段階に入った
Tribune Publishing と MediaNews Group(傘下にシカゴ・トリビューンなど複数の新聞を持つ)正式提訴2025 年末に提訴、進行中
CNN(Warner Bros. Discovery 傘下)正式提訴2026 年 5 月に提訴、最新の一件で、始まったばかり
Condé Nast(Wired と Vogue の親会社)侵害停止通知を送っただけ正式には提訴していない
Getty Images(ストックフォト大手)提訴していないむしろコンテンツライセンス契約を結んだ

よくある二つの誤解を正しておきます。第一に、Wall Street Journal の訴訟の原告は Dow Jones と NYP Holdings という二つの出版社であって、その親グループである News Corp 本体ではありません。第二に、Condé Nast は警告状を送っただけ、Getty にいたっては提携先であり、これらを「Perplexity を提訴した名簿」に数えるのは正しくありません。誰がどこに立っているのかを正直に明示してこそ、「複数社が提訴」という話を事実以上に怖く語らずにすみます。


これらの訴訟が争うのは「AI がコンテンツを持ち去ること」

これらの出版社の中心的な主張は実に一貫しています。Perplexity は、自社が費用をかけて生み出した記事を無断で収集・複製し、そのコンテンツを自前の回答にまとめ込んでおり、読者は読み終えればもう元のサイトをクリックする必要がない、というものです。

なぜこれほど怒っているのかを理解するには、まず一つの言葉を知る必要があります。ゼロクリック(zero-click)です。かつては、検索エンジンで記事を見つけると、ニュースサイトをクリックして開いて読み終え、サイトはその訪問で広告収入を得ていました。いまや回答エンジンが要点を直接まとめて渡してくれるので、元のサイトに行く必要がなくなり、そのメディアは訪問者を一人、収入を一つ分失います。もともと苦境にあるニュース業界にとって、これは生存上の脅威と形容されています。CNN は訴状の中で、Perplexity が自社のコンテンツ 1 万 7000 件あまりを収集・複製したと主張しています。

一方の Perplexity 側の立場はこうです。公開情報を整理し、出典のリンクを添えるのはフェアユースであり、ユーザーにはもともと情報を得る権利がある、と。どちらが正しいのか、裁判所はまだ中心的な争点について判断を下しておらず、だからこそこの一連の訴訟は「AI がコンテンツを収集する境界線」について重要な先例を打ち立てるとみられています。回答エンジンがなぜ生まれながらにこの争いを抱えるのかを知りたい方は、回答エンジンとは何かをご覧ください。


Amazon の訴訟:AI はあなたに代わって他者のシステムにログインできるか

著作権訴訟が Perplexity のコンテンツの出どころにかかわるものだとすれば、この Amazon の訴訟が賭けているのは、AI エージェント業界全体の未来です。

事の経緯はこうです。Perplexity の Comet ブラウザにはエージェント機能があり、ユーザーの Amazon アカウントにログインして、自動で価格を比較し注文してくれます。Amazon は、これは自社システムへの無断アクセスだと考え、提訴しました。2026 年 3 月、カリフォルニアの連邦地方裁判所がいったん差止命令を出し、Comet エージェントが Amazon のパスワードで保護された買い物エリアに入ることを禁じました。その数日後、第 9 巡回控訴裁判所がこの差止命令を一時停止し、機能をひとまず動かし続けられるようにしたうえで、全体としては控訴審に入り、口頭弁論は 2026 年 6 月に組まれています。

この訴訟の中心的な問いはとても興味深いものです。あなたが自分の口で AI に「Amazon でこれを買ってきて」と頼んだとき、その AI エージェントは「あなたの分身」とみなされ、あなたのアカウントを使ってよいのか。それとも、プラットフォームの許可を得ていない侵入者なのか。地方裁判所はいったん後者に傾き、プラットフォームの利用規約はユーザーの委任に優越しうると判断しました。米国の電子フロンティア財団(EFF)のようなデジタル権利団体までもが、ユーザーが委任した AI エージェントをプラットフォームがこれを口実に締め出すべきではないと主張して、Perplexity を支持しています。

なぜこれを「エージェント型コマース(agentic commerce)」の先例と呼ぶのでしょうか。それは、Perplexity 一社だけにかかわる話ではないからです。仮に裁判所が最終的に「プラットフォームの規約は AI エージェントを締め出せる」と認定すれば、今後あなたのために航空券を予約し、資産を管理し、予約を取るあらゆる AI エージェントは、プラットフォームごとに一つずつ改めて利用の許可を交渉しなければなりません。逆に「ユーザーの同意」で十分とされれば、ログインの壁の向こうにあるサービスのほとんどは、AI エージェントに開放せざるを得なくなります。どちらの結果になっても、それは後続の同種の事件が引用する基準となります。Comet とエージェント機能をもっと知りたい方は、Comet とは何かをご覧ください。


法廷には出ていないが、同じく膠着:クローラーの争いと収益分配の仕組み

法廷の外にも、注目に値する戦線が二つあります。

一つは技術面の衝突です。インターネットインフラ企業の Cloudflare は 2025 年に報告書を公表し、Perplexity が「隠密クローラー」を使って身元を偽装し、ウェブサイトが設定した「収集しないでください」という指示を回避していると指摘したうえで、信頼リストから外し、技術的な手段で直接ブロックしました。Perplexity はこれを否定し、Cloudflare が第三者サービスのトラフィックを誤って自社のものに数えていると反論し、自社の収集はユーザーがその場でトリガーするものであって、自動の大規模な巡回ではないと強調しています。この件は法廷には進みませんでしたが、コンテンツ側とライセンスを交渉する際の信頼の土台を同じように損ないました。

もう一つは、Perplexity が自ら差し出したオリーブの枝です。同社は「Comet Plus」という仕組みを打ち出し、サブスクリプション収入の 8 割を提携出版社に分配し、さらに初期パートナー向けの基金を設けました。すでに Gannett や Der Spiegel などのメディアが参加しています。この仕組みは本質的に「お金を払ってライセンスを得る」もので、商業的な協力によって法的リスクを吸収しようという狙いです。ただ、交渉が決裂したニューヨーク・タイムズや CNN といったメディアにとっては、明らかに折り合いがつかず、結局は法廷に向かいました。どのメディアがお金を受け取って協力する道を選び、どのメディアが提訴する道を選んだかは、自らの交渉力に対する判断の違いを映しています。


いまだ未確定の部分

この法的な戦いは派手に展開していますが、まだ結論の出ていないことも多く、ここで正直に明示しておきます。

  • 中心的な争点はまだ判断されていない:上記の著作権訴訟はいずれもまだ初期の手続き段階にあり(一部は証拠開示に入ったばかり)、裁判所は「AI のコンテンツ収集が侵害にあたるか」という中心的な問いについて、まだ判断を下していません。
  • Amazon の訴訟はまだ控訴中:差止命令はいまのところ一時停止されており、全体としては第 9 巡回控訴裁判所の審理を待つ状態で、結果は未確定です。
  • 賠償も和解もまだ見通しが立っていない:いまのところ、どの訴訟にも確定した賠償額や和解の結果はありません。

この記事は、公開されている訴訟の進捗を一般向けにわかりやすく整理したものであり、法的な助言ではありません。各訴訟にはいつ新たな進展があってもおかしくなく、本文に示した状況は整理した時点のものです。


Penchan(Penchan)の視点

Perplexity の訴訟を並べて見ると、それは実のところ二つの力に同時に挟まれています。上流のコンテンツ側は「私のものを持っていった」と訴え、下流のプラットフォーム側は「私のなわばりに侵入した」と訴える。これはまさに、コンテンツとサービスをつなぐ中間層の会社としての、その最も気まずい立ち位置を表しています。両端を結びつけると同時に、両端を怒らせてしまうのです。

そして、これらの訴訟の意味は、とうに Perplexity 一社の枠を超えています。出版社の著作権戦争は、回答エンジンというカテゴリー全体に対して、他者のコンテンツをどこまで使ってよいかという赤い線を引くことになります。Amazon の訴訟の結果は、今後 AI エージェントがあなたに代わってさまざまなサービスにすんなりとログインして物事を行えるかどうかを左右しかねません。AI がどう日常へ入り込んでいくかに関心のある人にとって、この法廷での攻防は、どんな製品発表会よりも次の段階の遊び方を決めるものです。

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